片頭痛のボツリヌス治療の概要と学術的根拠

美容皮膚科医のBinderら1)は、ボツリヌス剤 (ボトックス) による皺のばしの治療に伴い、患者の申告から片頭痛も軽減することがあることに気づき、51% が完全に改善、部分改善を合わせると89% にのぼることを1998年に報告しました。これを契機に一気に世界的に広まった。頭痛学者のSlverstein ら2)は 25 単位の投与で、投与3 カ月後には、大多数の患者が偽薬に比較して頭痛が改善していることを報告しました。

日本ではボトックスは保険適用ではありませんが自由診療で受けることが可能で、 寺本神経内科クリニックでは2002年よりこの技術を採用しています。30単位/ 回を基本投与量にしています。

3カ月を経過すると効果が低下し始めますが適宜再投与を実施していると、有効期間 伸びていく傾向があり、半年~1年に1回の施注で済むことが多くなります。

2~3回/月くらいの頭痛発作がある人にはお勧めです。特に頭痛発作時の頓服薬の効果があまりよくない人、頭痛自体が現れるのを減らしたい人には、試みる価値のある治療法です。またしわ伸ばしと一石二鳥を期待することができます。

〔文献〕
1) Binder WJ, Brin MF, Blizer A et al.: Botulinum toxin type A (BOTOX) for treatment of migraine headaches : An open-label study. Otolaryngol Head Neck Surg 123:669-676 2000
2) Silberstein S, Mathew N, Saper J et al.: Botulinum toxin type A as a migraine preventive treatment. For the Botox Migraine Clinical Research Group. Headache 2000;40:445-450

この記事を書いた人

寺本 純

1950年生まれ、名古屋大学医学部卒。しびれ、めまい、頭痛など外来の神経疾患を得意とする。著書『臨床頭痛学』(診断と治療社)は国内初の医学専門書で頭痛専門医の必携書となっている。片頭痛、郡発頭痛、肩こりの目立つ緊張型頭痛へのボツリヌス治療を国内最初に実施し、その治療成果を多くの学会、文献で報告している。さらにボツリヌスが末梢神経に作用する点に着目し、肩関節周囲炎や膝関節炎、花粉症にも国内で初めて応用し、優れた成績を医学報告している。現在は名古屋の寺本神経内科でボツリヌス治療を行っている。