足底筋膜炎のボツリヌス治療の概要と学術的根拠

中年の男性に多い症状ですが、足底に反復加重が加わりやすいマラソン選手などでの発症が多いことも知られています。踵骨から前方の足趾に広がる膜様の腱組織の障害によって生じます。

症状は踵の内側に生じる痛みで、前方へも広がることがあります。特に起床後に症状が強く、歩行しようとすると痛みのために歩行困難になります。しかしそれでも歩行を続けるとしばらくして軽減してきます。中高年の男性の場合には、足裏の組織の硬化によることが予測されています。夜間の非活動時に組織が固くなり、歩行によって前後に牽引されるので、柔軟性をある程度取り戻すからと考えられています。

いずれは自然に改善しますが、その間、1~3年くらい要することあるので、つらければ治療の対象となります。湿布、鎮痛薬の使用のほか、足底板の調整などによる理学療法、症状が強ければ足底腱組織の離断する方法などがある。さらに衝撃波を用いて、疼痛部分に照射すると改善することが認められています。

ボツリヌスを用いた治療では、50例を対象にした二重盲検試験1)の結果が報告されており、6カ月、12カ月後の評価で有意差をもって有効であることが示されています。

ボトックス治療で、完全に痛みがとれるわけではありませんが、足裏の筋肉が緩んでだいぶ楽になりますし、最大の特徴は、ほかになにもしないで自然に改善する時期を待つということです。痛みがまだあれば、その時点で追加投与すればよいのです。

1) Ahmad J, Ahmad SH, Jones K: Treatment of plantar fascilitis with botulinum toxin. Foot Ankle Int 2017;38:1-7.

この記事を書いた人

寺本 純

1950年生まれ、名古屋大学医学部卒。しびれ、めまい、頭痛など外来の神経疾患を得意とする。著書『臨床頭痛学』(診断と治療社)は国内初の医学専門書で頭痛専門医の必携書となっている。片頭痛、郡発頭痛、肩こりの目立つ緊張型頭痛へのボツリヌス治療を国内最初に実施し、その治療成果を多くの学会、文献で報告している。さらにボツリヌスが末梢神経に作用する点に着目し、肩関節周囲炎や膝関節炎、花粉症にも国内で初めて応用し、優れた成績を医学報告している。現在は名古屋の寺本神経内科でボツリヌス治療を行っている。