医療倫理に関わる問題

思考のイメージ

日本頭痛学会が、ボツリヌス治療の臨床試験を事実上門前払いしたことは、憲法違反であり、医療被害を蔓延させたことは完全に不法行為です。

慢性片頭痛に陥った場合には、直接担当医に、ボツリヌスという治療法があるからやって欲しいと申し出てください。現在保険が通っていないから、というのは拒否理由にはなりません。なぜならば、すでに健康被害であるからです。健康被害に陥ったものを保険でできないという論理で拒否することは医学倫理上通用しません。

PREEMPT スタディでボツリヌスの投与方法などは文献で確認できますから、理論上は担当医が実施できるはずです。技術的な問題はここでは問いません。もしできないなら、日本頭痛学会にその治療法を要求してください。

それで埒があかなければ、法的な対応策はひとつの救済手段となるでしょう。誰がみても明らかな憲法違反があり、結果は健康被害ですから、現状では前例はありませんが, 一定の結果は得られるはずです。ただこういった医療問題の担当をしてくれる弁護士は必ずしも多くないのが実情ですから、いろいろと問い合わせてください。弁護士を介して寺本神経内科クリニックに問い合わせいただければ、医学情報を提供します。

私は20年前より片頭痛に対するボツリヌス治療を実施しており、慢性片頭痛についてもほとんどの例で改善できることをすでに学会で報告しています。中には3年くらい要した例もありますが、30例を越える患者で全員成功しています。もちろん生活に支障はない程度の頭痛が残っているといったケースはありますが、困ったときにときどき頓挫薬を使用するのみといった状態にまで改善し、再悪化したときには不定期(6~12カ月くらい)にボツリヌス治療の再実施をすれば良好に経過しています。中にはまったく頭痛が消えてしまったという人もいます。今後全員がこのような効果が得られるかどうかまでは断言できませんが、大多数は人がなんとか慢性片頭痛から脱却できるのです。

法的にも改善するまでを確認したい場合には、先に弁護士に相談し、対応を考えてから 弁護士を介して連絡いただければ、それなりの準備で臨みます。

片頭痛は生活改善治療です。連日頭痛が続き、一生その状態が続くというのはとんでもない人生のマイナスです。実際に毎月に何回も寝込むひどい慢性片頭痛だった7人に限って焦点を合わすと、全員がときどき頭痛薬くらいは利用していますが、ほとんど通常の生活を営めるようになっているのを確認しています。

慢性片頭痛を止めなければ、一生が台無しになるほど生活の質をさげてしまうことになります。場合によっては、法的にも対処して欲しいと主張するのは、単純に患者さん個々の権利の問題だけではなく、日本の頭痛医療のレベルを上げていく意味でも、重要な警告になるからです。

この記事を書いた人

寺本 純

1950年生まれ、名古屋大学医学部卒。しびれ、めまい、頭痛など外来の神経疾患を得意とする。著書『臨床頭痛学』(診断と治療社)は国内初の医学専門書で頭痛専門医の必携書となっている。片頭痛、郡発頭痛、肩こりの目立つ緊張型頭痛へのボツリヌス治療を国内最初に実施し、その治療成果を多くの学会、文献で報告している。さらにボツリヌスが末梢神経に作用する点に着目し、肩関節周囲炎や膝関節炎、花粉症にも国内で初めて応用し、優れた成績を医学報告している。現在は名古屋の寺本神経内科でボツリヌス治療を行っている。