腋窩多汗症のボツリヌス治療の概要と学術的根拠

腋窩多汗症のイメージ写真

わきの汗が多くて、衣服を汚すなどといった不自由さを感じる人は少なくないでしょう。また匂いなどか気になる場合も少なくないと思います。

重症腋窩多汗症については、健康保険で受けられるようになりました。認可病名に『重症』という文言が入っているのは、当局があまり多く使わせたくないとの配慮ではないかとの声があります。担当は皮膚科ですから、情報は乏しいのですが、思ったよりは普及していない模様です。その根拠として、1度受診して患者登録をしないと当該医療機関がボトックスを購入できないルールになっていることが関係しているでしょう。

また『重症』の名目で、一医療機関で多くの治療をすると、当局に目をつけられることを警戒する向きもあるようで。

なにをもって『重症』と言うかは不明ですが、上記したように重症ではなくても困る人は多いのが現状ですから、 寺本神経内科クリニックでも対応しています。健康保険では両側で100 単位の投与となっていますが、50単位で十分効きます。自律神経に作用し発汗防止の効果については筋肉などに対する作用より有効期間が長く、半年~9 カ月ほど効きます。春先に一回実施するだけで一夏過ごすことができます。

保険医療機関では2回受診する必要があり、30%負担の医療費であるのと比較すると1回受診、 50単位で済むことを考えると 100%負担でも、ほとんど同額になりますから、受診をお勧めします。

〔文献〕
ボトックス添付文書

この記事を書いた人

寺本 純

1950年生まれ、名古屋大学医学部卒。しびれ、めまい、頭痛など外来の神経疾患を得意とする。著書『臨床頭痛学』(診断と治療社)は国内初の医学専門書で頭痛専門医の必携書となっている。片頭痛、郡発頭痛、肩こりの目立つ緊張型頭痛へのボツリヌス治療を国内最初に実施し、その治療成果を多くの学会、文献で報告している。さらにボツリヌスが末梢神経に作用する点に着目し、肩関節周囲炎や膝関節炎、花粉症にも国内で初めて応用し、優れた成績を医学報告している。現在は名古屋の寺本神経内科でボツリヌス治療を行っている。