花粉症のボツリヌス治療の概要と学術的根拠

花粉症のイメージ写真

アレルギー性鼻炎のうち、特定時期に花粉によって生じるものを花粉症と言います。鼻の中の下鼻甲介から粘液が分泌されます。この粘液分泌をボツリヌスで減らすことが出来ます。下鼻甲介内の自律神経に作用し、結果的に分泌組織の活動を抑制するからです。

外国では、下鼻甲介の粘膜内に直接注射することによって、5カ月以上分泌を防ぐことができるとの医学論文が示されています。

寺本神経内科クリニックでは注射ではなく、鼻腔へ滴下1)しています、粘膜表面からしみこむことによって効果を発揮します。効果は1週間くらい続き、うまくいくと2週間ほどもちます。刺激がないことと、直ぐに効果が現れるのが特徴です。

花粉症の最悪時期には個人差があることからその時期の1週間くらい有効ならば満足という人にはお勧めです。特に翌日に試験やプレゼンがある、といった人には最適です。

粘膜へ直接注射することに比較すると劣りますが、注射を採用していない根拠のひとつとして、この注射法の報告は、先進国から出た論文でないことも考慮しているからです。

〔文献〕
1)寺本純:アレルギー性鼻炎に対するA型ボツリヌス毒素投与による改善効果 新薬と臨床 59;2168-2172 2010

この記事を書いた人

寺本 純

1950年生まれ、名古屋大学医学部卒。しびれ、めまい、頭痛など外来の神経疾患を得意とする。著書『臨床頭痛学』(診断と治療社)は国内初の医学専門書で頭痛専門医の必携書となっている。片頭痛、郡発頭痛、肩こりの目立つ緊張型頭痛へのボツリヌス治療を国内最初に実施し、その治療成果を多くの学会、文献で報告している。さらにボツリヌスが末梢神経に作用する点に着目し、肩関節周囲炎や膝関節炎、花粉症にも国内で初めて応用し、優れた成績を医学報告している。現在は名古屋の寺本神経内科でボツリヌス治療を行っている。