片頭痛の治療

頭痛のイメージ画像

軽くて、日常生活にたいした影響がなければ、がまんして軽くなってくるのも待てばそれで十分です。これでもの足らなければ、市販薬などを決められた範囲の量で飲んでおけば改善します。実際に過半数の人はこういった対応で十分です。

これらの対応で済まないという場合には医療機関での対応が必要でしょう。市販薬と共通の成分や、それと類似の鎮痛薬の処方を受けて、それでよければそれでよいでしょう。

それらの薬剤で不十分な場合には、以前は酒石酸エルゴタミン剤がよく用いられていました。これば片頭痛発作で拡張した動脈を収縮させて痛みの軽減を計るものです。現在でも発売されていますが、前ぶれのうちに服用しないと有効性が低くなること、また多用すると手足の血管も収縮するので手足の冷え感などが現れることもあります。

これに対し、1980年代よりトリプタン系の薬剤が開発され、1990年代半ばには欧米で発売になりました。これは頭部の動脈を選択的に収縮させるというもので、利用するタイミングが合えば、非常によく効きます。
日本では2000年より発売され、複数のメーカーが発売しました。経口薬以外に注射薬、口腔内溶解薬もあります。現在では特許期間が切れ、錠剤の1種類、と注射薬、口腔内溶解薬を除き、ジェネリックになっています。
なお、片頭痛の治療にはもうひとつの異なる方法があります。これは予防治療と呼ばれるものです。トリプタンなどは頭痛の発作のときだけに使用する頓服で、これらを頓挫薬、あるいは抑制薬と呼ぶのに対し、予防作用を示すものを予防薬と呼びます。

プロプラノロールなどのβ遮断薬系、アミトリプチリンなどの抗うつ薬系、バルプロ酸などの抗てんかん薬系です。これらは連日使用することによって頭痛の頻度が30%くらい減ります。10回/月の発作が7回/月くらいに減れば十分に有効と評価されます。効果は2カ月してからでないと確認できません。もし有効であっても長期に使用すると効果が低下するので、3~6カ月使用したら一旦止めることが推奨されています。

この記事を書いた人

寺本 純

1950年生まれ、名古屋大学医学部卒。しびれ、めまい、頭痛など外来の神経疾患を得意とする。著書『臨床頭痛学』(診断と治療社)は国内初の医学専門書で頭痛専門医の必携書となっている。片頭痛、郡発頭痛、肩こりの目立つ緊張型頭痛へのボツリヌス治療を国内最初に実施し、その治療成果を多くの学会、文献で報告している。さらにボツリヌスが末梢神経に作用する点に着目し、肩関節周囲炎や膝関節炎、花粉症にも国内で初めて応用し、優れた成績を医学報告している。現在は名古屋の寺本神経内科でボツリヌス治療を行っている。