採血後の針跡の持続性の痛みのボツリヌス治療の概要と学術的根拠

注射のイメージ写真

採血などの後、注射部を中心に傷とは不相応な強い痛みが長く続くことがあります。こちらで紹介したCRPSと基本的には同じですが、CRPSでは、周囲の皮膚温に変化がでたり皮膚などが萎縮する場合がありますが、それはもっと大きな怪我などによる場合です。針後の痛みが強く続く場合でもその刺激が脳を介して運動神経へ波及し筋肉の異常緊張が現れることもあります。

いままでは、もっと『派手』なCRPSを中心に目が向けられていましたが、針後の長く続く痛みも、このCRPSと同じものです。

保険医療の範囲では、治療法がありません。疼痛部位へボトックスを少量注射すると改善することが期待されます。有効率がどうかはまだ分かっていませんが、低くはないと予測されます。

放置しても数カ月~数年後に自然によくなる場合もありますし、永久的なこともあります。早く改善する目的でボツリヌス治療を考えてみるのも一法です。最近、医療トラブルとして医師会などにこの問題が持ち込まれるケースが増えています。どうしてもまれに生じる運の悪い現象と言わざるを得ず、医療ミスとは厳密には言えないのですが、たいていは、医療側の初期対応が悪く、賠償責任を問われる結果になっています。

この記事を書いた人

寺本 純

1950年生まれ、名古屋大学医学部卒。しびれ、めまい、頭痛など外来の神経疾患を得意とする。著書『臨床頭痛学』(診断と治療社)は国内初の医学専門書で頭痛専門医の必携書となっている。片頭痛、郡発頭痛、肩こりの目立つ緊張型頭痛へのボツリヌス治療を国内最初に実施し、その治療成果を多くの学会、文献で報告している。さらにボツリヌスが末梢神経に作用する点に着目し、肩関節周囲炎や膝関節炎、花粉症にも国内で初めて応用し、優れた成績を医学報告している。現在は名古屋の寺本神経内科でボツリヌス治療を行っている。