群発頭痛のボツリヌス治療の概要と学術的根拠

完全に片側に現れる頭痛で、一日に1~2回、1回あたり1~2時間続く激しい痛みを示す頭痛です。この時期(群発期)が現れると1~2カ月続きます。この群発期は半年~2年に1回くらいあらわれます。他の特徴として約80%が男性で、頭痛発作中は痛い側で流涙、鼻汁分泌、結膜充血などが起きます。他の身体的特徴として、平均身長が高いこと、血圧が若干低いこと、頭のよい人に多いこと、ひがみっぽい考えをしないこと、などが特徴的です。若い時期に始まり、50~60過ぎると軽快していきますが、中には中年になってから初発する場合もあります。

頭部に、片頭痛の治療と同様にボトックスを何カ所かに施注しますと、たいていの場合1週間以内に頭痛が現れなくなり、結果的に群発期が終了します。群発期がはじまってから1週間以内に治療をしたほうが明らかに成績が良好です。

いままでの治療は、頭痛発作時にイミグランの注射(自己注射もある)、あるいは7リットル/分の酸素吸入で痛みを除去することができます。予防薬として、ワソラン、リーマス、デパケンを連用すると頭痛の頻度が減ります。

問題点は、イミグランの注射を繰り返すと、効果が落ちるだけでなく、一日あたりの頭痛頻度が増えていきます。また予防薬では、群発期の終了までの期間が延びますので、累積してみると、大いに優れているとは言えない場合も少なくありません。

2000年にFround1)が有効性を報告し、国内でも同様の成績が示されています2)。その後、 寺本神経内科クリニックでは、投与法をいろいろと工夫をしたところ、現在では90%の有効率を示しています。まれに効果が乏しかった場合には、2~3週間後に再投与を実施すると頭痛は消えていきます。いままでに一人だけ3回の投与が必要だった人がいますが、その結果消失しています。なお1年中頭痛が続くまれな型である慢性群発頭痛でもかなり効きますが、その型では難渋することもあるのが事実です。

群発期が現れたらすぐに治療をすると、1回だけの治療で済むことが圧倒的に多いので、積極的にお勧めしたい治療法です。

〔文献〕
1) Fround BJ, Schwartz M : The use of Botulnum toxin-A in the treatment of refractory cluster headache; case reports. Cephalalgia 2000;20:329-330
2)寺本純: ボツリヌス治療最前線 講談社 東京 2005

この記事を書いた人

寺本 純

1950年生まれ、名古屋大学医学部卒。しびれ、めまい、頭痛など外来の神経疾患を得意とする。著書『臨床頭痛学』(診断と治療社)は国内初の医学専門書で頭痛専門医の必携書となっている。片頭痛、郡発頭痛、肩こりの目立つ緊張型頭痛へのボツリヌス治療を国内最初に実施し、その治療成果を多くの学会、文献で報告している。さらにボツリヌスが末梢神経に作用する点に着目し、肩関節周囲炎や膝関節炎、花粉症にも国内で初めて応用し、優れた成績を医学報告している。現在は名古屋の寺本神経内科でボツリヌス治療を行っている。