新しい片頭痛薬に関する情報

頭痛のイメージ画像

片頭痛の頻度を減らすことを目的にした、抗CGRP剤が発売になります。
いくつかの製薬会社が開発しており、いずれ複数になると考えられます。
これに関する期待が大きいようですから、現在判明している範囲で情報を提供することにします。

CGRPとは片頭痛発作が出現する際に関与する物質です。
このCGRPを抑制することによって頭痛を減らそうとするものです。
薬剤はしては抗体薬と呼ばれるもので、CGRPに対する抗体で、免疫反応によってCGRPの活性を抑制するというものです。

毎月1回の注射で、頻度の多い片頭痛が対象となっており、4~5回/月くらい頭痛の回数が減るというものです。
6カ月までの効果を記した書類が配付され始めましたが、初めの1~2カ月以後は、同様の効果が持続されています。
累積効果はないようです。

急激に片頭痛の回数が増えてきたときなど、一定の期待ができます。
もちろんこのような薬剤か手元にあった方が治療の選択肢が増える点では好ましいのですか、以下の問題点を指摘しておきます。

1)欧米では発売後,翌年には売り上げが伸びていない、むしろ減っている点です。需要が高まっていないということです。

2)2020年英国では、この薬剤は発売されていたのですが、社会保険医療として無償実施に決まったのはボツリヌスであったという事実です。

3)抗体薬であるところから、それに対する中和免疫が体内で産生されます。外国のデータでは6カ月後に7.8%、18カ月後には15.5% であったと記載されています。薬効に影響は乏しいとの記載もありますが、中和抗体がもっと増えれば効かなくなりますから、長期連用には向いていないかもしれません。

4)免疫蛋白であるところから、アナフィラキシーの可能性は一定のリスクとなります。

以上より、累積効果があり、中和抗体の可能性が低く(多量投与者のデータで0.4%) 1 回/3カ月以下と受診回数が少ないボツリヌス治療を凌駕するのものではないと考えられます。
しかし個人差はあるでしょうから、否定するものではありませんが、よい薬が出るなどと医療機関が説明しているところがありますが、過剰な期待をしないでください。

この記事を書いた人

寺本 純

1950年生まれ、名古屋大学医学部卒。しびれ、めまい、頭痛など外来の神経疾患を得意とする。著書『臨床頭痛学』(診断と治療社)は国内初の医学専門書で頭痛専門医の必携書となっている。片頭痛、郡発頭痛、肩こりの目立つ緊張型頭痛へのボツリヌス治療を国内最初に実施し、その治療成果を多くの学会、文献で報告している。さらにボツリヌスが末梢神経に作用する点に着目し、肩関節周囲炎や膝関節炎、花粉症にも国内で初めて応用し、優れた成績を医学報告している。現在は名古屋の寺本神経内科でボツリヌス治療を行っている。