腋窩、手のひらなどの汗が多くて困っている人は少なくありません。制汗剤や汗吸収パッドの使用などで対応している人が多いとともいます。医学的な面から言えば、ボツリヌス剤を当該部へ細かく施注すれは、短くて4カ月、平均的には10カ月くらい効果が持続します。
①腋窩多汗症
健康保険で、重症腋窩多汗症の病名で治療が受けられます。『重症』の名称がくせもので、皮膚科などで実施すると、保険当局から他の患者への処方内容が査定(保険で支払われないこと)などが多く、皮膚科医がうんざりして、ボツリヌス治療をだんだんしなくなってきました。一方、かつては美容系で実施していたのでずが、美容系は一般に高額であるので、価格に関するクレームを避けるために、保険適用でできるから、とのことで断る施設が多くなりました。
しかし工夫によって、保険診療とたいして変わりない効果が引き出せます。
詳細については、YouTubeチャンネル(Dr.teramotos) の腋窩多汗症の項をご覧ください。
②手掌多汗症
手のひらの汗が多く、書類が濡れる、キーボードへ汗が落ちる、他人と握手などができない、という人は少なくありません。治療介入の要不要は別として、厚労省の統計で5%強の人にそういった症状があるとの記載があります。
この治療は非保険治療としてボツリヌス施注がよく効きます。注射のときは皮膚の表面麻酔、冷却などをしますが、はっきり言って痛いのは事実です。片側5分くらいは我慢してもらう必要がありますが、それ以後は、注射後の軽い違和感はありますが、ふつうに手を使うことができます。価格と腋窩多汗症と同じです。この成績については日本ボツリヌス学会で報告されています。
③足部多汗症
ズックを履いていても靴内ですべって転びそうになる、ビニールサンダルが脱げて飛んでいってしまうなど、足部の多汗症で困っている人も、ときどきあります。たいていは手掌多汗症と共存しますが、足の方が症状が強いという人もあります。治療は、手掌多汗症と同様です。
④その他
胸部、顔面発汗などが多くて困るという人もあります。顔面のボツリヌスは顔面筋への影響が出がちでがちですので、状況に合わせた治療が必要となります。