認知症予防のための歯周病対策

国民歯科皆検診が実施される公算が高くなってきました。この最大の目的は、歯周病菌によって作られるベータアミロイドが血液を介して脳へ沈着しアルツハイマー病を引き起こす可能性があることが判明してきたからです。

国民の70%は歯周病菌を有するとされており、各種の口腔内ケアを実施したとしても、最大の悪化要因は、食いしばり(含む歯ぎしり)であることは歯科医師の常識です。

食いしばりは人口の約10%に存在すると予測されていますが、自覚症状は軽い場合を含めると、大多数に人に存在すると言われています。アメリカでは70%という統計結果があります。

自覚の強い食いしばりは、欧米ではボツリヌス治療が主流ですが、保険制度の異なる日本ではほとんど普及していません。顎に加わる力は顎の部分の咬筋(こうきん)だけではなくこめかみの側頭筋(そくとうきん)の方が筋力が強いことが解剖学的に知られています。また食いしばりで噛み込んだときの力は、咀嚼時よりかなり強いことか知られており、歯に加わる力が大きく、歯や歯肉への負荷が大きくなります。

自覚症状のつよい食いしばりの人でもだいたいは3~4カおきのボツリヌス治療で3~4回の治療でかなり軽減しますから、いったん通院不要となり、再悪化したら再治療することができます。

アルツハイマーの問題が発生してきましたから、自覚はできても強くはない場合にも、対応の必要性があるようになりました。現実的にはそんな場合には1回/年くらい実施して、また症状を自覚したら実施すれはよいのではないでしょうか。

対応できる施設が問題となります。美容系でえら張りの治療として咬筋へボツリヌス治療をしていますが、側頭筋は対象とはされていません。フェースラインが目的ですから、目標が異なります。また一部の歯科では咬筋への投与が実施されいますが、医師法の関係で歯科医師が側頭筋に投与するのは違法となる可能性があり、実施はしていないようです。その法的問題もあり、医師なら可能ですが、それらの実地上の問題点とは別に、この食いしばりについてまずいろいろと知ってもらうことが重要と考え、以下の4編のユーチューブ動画を作成しましたので、どうぞご覧ください。なお、これら以外にも頭痛関係の動画を挙げてますから、興味かあればご覧ください。

この記事を書いた人

寺本 純

1950年生まれ、名古屋大学医学部卒。しびれ、めまい、頭痛など外来の神経疾患を得意とする。著書『臨床頭痛学』(診断と治療社)は国内初の医学専門書で頭痛専門医の必携書となっている。片頭痛、郡発頭痛、肩こりの目立つ緊張型頭痛へのボツリヌス治療を国内最初に実施し、その治療成果を多くの学会、文献で報告している。さらにボツリヌスが末梢神経に作用する点に着目し、肩関節周囲炎や膝関節炎、花粉症にも国内で初めて応用し、優れた成績を医学報告している。現在は名古屋の寺本神経内科でボツリヌス治療を行っている。