むちうち症に関する問題点

むち打ち症で頚椎カラーを付ける女性

むちうち症とは

交通事故、特に追突されたあと、あるいはコンタクトスポーツなどで相手と激突したあとなどに生じる現象です。

正式には、むちうち症は医学用語ではありません。外傷性頸部症候群として一括されています。この中には、脊椎の障害、脊髄の障害、神経根の障害、脊髄を取り巻く硬膜の破綻など多くのものが含まれますが、そういったレントゲンやMRIなどの画像診断では異常が認められない一群が存在します。

いつまで経っても、首の痛みや背中のこりが改善していかない、という場合です。かつては補償金欲しさのいわゆる『疾病利得』と考えられ、証明する手だてがないところからいろいろと紛糾するケースが多かったのは確かです。

最近では、こういったケースは3カ月で完治するとの前提で補償などが実施されています。筋肉の断裂や筋肉内出血の柔部組織の変化は事実このくらいの期間があれば改善します。

しかしべつだん疾病利得の意識がなくても痛みが続く場合があります。このような場合には、当初は筋肉の障害などによる痛みがあり、その筋肉が防御的収縮をしているうちに、自然に筋肉が収縮するような情報が脳から発せられてしまうことがあります。その筋肉に着目していること自体も要因になります。

この状態を局所性ジストニアと呼びます。神経内科の医師でもこれらの点にある程度詳しい場合には認識しています。

実際のところ、大多数は整形外科ではこの現象を見抜けないために残ってしまう現象です。これらの点について詳しく診断書に記載することによって、保険会社にも理解を示してもらえることが増えてきました。

むちうち症のボツリヌス治療

従来は、マッサージ、鍼灸、ストレッチで対処していました。これでよくなることも少なくありませんが、それでも長引く場合には、マッサージ師や柔整師は困っているようです。当初は対応してくれても、終末がみえないところから、うんざりしてしまいがちだからです。

これはジストニアですから、ボツリヌス治療でかなり改善します。心理的負荷はしばらく残るでしょうから、すぐ完全によくなるわけではありませんが、1週間ほどで痛みが半減しますので、それを契機によくなっていきます。整形外科にとっては専門外ですので、診断もれがあったと解釈するべきです。疾病利得を考えている場合には見抜く方法がありますが、ここでは述べられません。

この記事を書いた人

寺本 純

1950年生まれ、名古屋大学医学部卒。しびれ、めまい、頭痛など外来の神経疾患を得意とする。著書『臨床頭痛学』(診断と治療社)は国内初の医学専門書で頭痛専門医の必携書となっている。片頭痛、郡発頭痛、肩こりの目立つ緊張型頭痛へのボツリヌス治療を国内最初に実施し、その治療成果を多くの学会、文献で報告している。さらにボツリヌスが末梢神経に作用する点に着目し、肩関節周囲炎や膝関節炎、花粉症にも国内で初めて応用し、優れた成績を医学報告している。現在は名古屋の寺本神経内科でボツリヌス治療を行っている。