医学的な対応策

医師による問診のイメージ写真

まずは慢性片頭痛に陥らないことを考える必要があります。トリプタンはたしかによく効くところから使用しがちです。一旦使用するとその効果の良さからなかなか後戻りできません。片頭痛の治療の最大の目的は、生活改善治療ですから、若干の頭痛があっても生活に支障があるほどでなければ、市販薬程度で止めたり、また誘発条件が気づく人はそれらの条件を回避したりするなどの対応をして、トリプタンの開始をなるべく遅らすことも大切です。現実に25歳までくらいなら市販薬でなんとか対応できる人が多いのが実情です。

もしトリプタンを使用したならなるべく頼り過ぎないこと、市販薬程度で止められるときにはそうするなどの対処が必要です。

頭痛学会のガイドラインには、2回/月以上頭痛がある場合には、予防薬を進めていますが、その程度の頻度であわてて使用する必要はありません。予防薬は頭痛の頻度を30%くらい減らすだけですし、長くても半年くらいでいったん止める必要があります。延々と処方を受けている場合がありますが、それは誤りです。また予防作用のある薬剤は特殊な場合を除き、1種類のみ使用するのが原則です。数種類同時に処方されている場合がありますが、間違いです。この注意点はガイドラインには書いてありません。

トリプタンなら10日/月以上、鎮痛薬なら15日/月以上服用する場合を薬物乱用頭痛と言います。薬物乱用頭痛は薬剤を止めれば元の頭痛頻度に戻ることを前提とした診断名ですから、本当に確認するならば、苦しくても2カ月止めてみる必要があります。それで戻れば薬物乱用頭痛であったと診断されます。もしそうでなければすでに慢性片頭痛です。現実的に薬を止めてみることは困難なことが多く、その場合にはすでに慢性片頭痛と考えてください。

慢性片頭痛になると予防薬は効きません。ほぼ毎日頓挫薬を利用する結果になります。頓挫薬も治療開始時に比較すると効果がだいぶ低下しています。こうなると、ほぼ一生この状態が続くことになります。補助的に抗うつ薬や睡眠薬を利用する人も多いのですが、効果はせめてもの効果にすぎません。  だからこそ、欧米では日本でトリプタンが発売する前の段階から問題となり、ボツリヌス剤の利用、開発が行われていたのです。

この記事を書いた人

寺本 純

1950年生まれ、名古屋大学医学部卒。しびれ、めまい、頭痛など外来の神経疾患を得意とする。著書『臨床頭痛学』(診断と治療社)は国内初の医学専門書で頭痛専門医の必携書となっている。片頭痛、郡発頭痛、肩こりの目立つ緊張型頭痛へのボツリヌス治療を国内最初に実施し、その治療成果を多くの学会、文献で報告している。さらにボツリヌスが末梢神経に作用する点に着目し、肩関節周囲炎や膝関節炎、花粉症にも国内で初めて応用し、優れた成績を医学報告している。現在は名古屋の寺本神経内科でボツリヌス治療を行っている。