手術後の傷痕の痛みが続くことがあります。内視鏡手術のような小さな傷でも同様です。下着が少しこすれただけでも痛いということでよく認識されます。手術後若干の痛みが残るのは当然ですが、けっこうな痛みが長く残る場合が、ある報告では5~10%くらいあると指摘1)しています。たいていは皮膚が癒着したあとのケロイドの部分が痛みます。
一見、こちらやこちらで紹介したようなCRPSに似ていますが、他の症状は現れませんので、詳細な成因論的には共通性があるかもしれませんが、別に考えたほうがよいでしょう。
このような傷に対しては、痛い部分に少しずつボツリヌスを細かく分注しておくと痛みが大幅に和らぎます。3カ月くらいすると効果が落ちてくるので再投与します。やがてケロイドが収縮していくと痛みもほぼ出なくなります。
〔文献〕
松岡豊ほか:術後痛の基礎研究 ペインクリニック 40:25-34 2019